樹木解説
高さは10-15mになる。樹皮は暗灰色。葉は互生し、長さ8-10cmの広卵状楕円形で、先は急に尖り、ふちには鋭い鋸歯がある。葉の両面と葉柄は有毛。3-4月、葉が出る前に直径4-4.5cmの淡紅色の花が3-4個散形状に咲く。花弁は5個、雄しべは30-35個、雌しべは1個で花柱の下半分に白毛が密生する。萼筒は短く毛がある。果実は球形で紫黒色に熟す。
15.03.27小石川播磨坂 |
16.04.21新宿御苑 |
12.04.06新宿御苑 |
09.04.03芝離宮 |
12.04.09上福岡 |
12.04.12富士見市 |
12.04.12富士見市 |
12.04.12富士見市 |
樹名:アメリカ |
11.03.29新宿御苑 |
11.03.29新宿御苑 |
11.03.29新宿御苑 |
樹名:染井匂(ソメイニオイ) |
10.04.18小石川植物園 |
10.04.18小石川植物園 |
10.04.18小石川植物園 |
樹名:昭和桜(ショウワザクラ) |
10.04.18小石川植物園 |
10.04.18小石川植物園 |
10.04.18小石川植物園 |
樹名:ナニワザクラ(難波桜) |
14.04.07花と緑の振興センター |
14.04.07花と緑の振興センター |
14.04.07花と緑の振興センター |
樹名:ヨウシュン(陽春) |
17.03.28花と緑の振興センター |
17.03.28花と緑の振興センター |
17.03.28花と緑の振興センター |
補足
品種名 | 樹形・樹高 | 葉形 | 先端 | 基部 | 鋸歯 | 密腺 | 葉柄毛 | 花序 | 葉弁 | 萼筒 | 萼鋸歯 |
ヤマザクラ | 傘状・高木 | 長楕円、楕円 | 鋭尖 | 円 | 単、重 | 葉柄上部 | なし | 散房 | 中 | 長鐘 | なし |
オオシマザクラ | 傘状・高木 | 広卵形 | 尾状鋭尖 | 円 | 重で先端は芒状 | 葉柄上部 | なし | 散房形 | 大 | 長鐘 | あり |
カスミザクラ | 傘状・高木 | 広楕円、倒卵 | 尾状鋭尖 | 円、心 | 粗い重、単 | 葉柄上部 | 少 | 散房形 | 中 | 長鐘 | なし |
オオヤマザクラ | 広卵状・高木 | 楕円 | 尾状鋭尖 | 心 | 粗い単、重 | 葉柄上部 | なし | 散形 | 中 | 長鐘 | あり |
エドヒガン | 傘状・高木 | 楕円 | 尾状鋭尖 | 鈍 | 浅い重 | 葉身基部 | 多 | 散形 | 小 | 壷 | あり |
マメザクラ | 傘状・低木 | 狭長楕円、倒卵状 | 鋭尖 | 鈍 | 二重、欠刻状 | 葉身基部 | 多 | 散形 | 小 | 筒 | なし |
タカネザクラ | 盃状・低木 | 卵状楕円、倒卵状楕円 | 尾状鋭尖 | 円、心 | 欠刻状 | 葉柄上部 | 少 | 散形 | 小 | 長鐘 | なし |
チョウジザクラ | 傘状・亜高木 | 倒卵状楕円 | 尾状鋭尖 | 鈍 | 欠刻状 | 葉身基部 | 多 | 散形 | 小 | 狭長筒 | あり |
ミヤマザクラ | 卵状・亜高木 | 倒卵状 | 鋭尖 | 円 | 欠刻状 | 葉身基部 | 多 | 総状 | 小 | 釣鐘壷 | あり |
カンヒザクラ | 傘状・亜高木 | 楕円、鈍 | 尾状鋭尖 | 円 | 浅い単、重 | 葉柄上部 | なし | 散形 | 中 | 鐘 | なし |
シナミザクラ | 広卵状・亜高木 | 卵形、楕円 | 鋭尖 | 円 | 二重 | 葉柄上部 | 少 | 散形 | 中 | 鐘壷 | なし |
ソメイヨシノ | 傘状・高木 | 楕円 | 鋭尖 | 鋭尖 | 二重 | 葉柄上部 | 中 | 散形 | 中 | 狭長壷 | あり |
小説の木々
香たちのもとへ南から風が吹いてくる。どこの桜か、淡い色の花びらが、蝶の群れのように行き過ぎる。遠くで木々が煽られたようなザザッという音が、香たちの耳に届いた。と思うと、香と正二は見えない手に突き飛ばされたかっこうになり、後ろへ下がった。花びらが一気に拭きさらわれる。突風だった。園庭に敷かれたシートが、まくり上げられ、料理や酒がひっくり返る。人々は悲鳴を上げ、慌ててシートを押さえにかかった。桜も激しく揺さぶられ、満開の花がふるえながら枝にしがみつく。飛ばされてきた複数のシートが巻きついて、古木の幹が華やかな色で飾られる。力及ばずに吹き飛ばされた花びらは、青空を背景に吹雪のように舞い上がり、強い陽射しのなかに溶けていった。(歓喜の仔「天童荒太」)
池は桜の木に囲まれている。開花予想は今週あたりだった気がするけど、ここのところ少し冷え込んでいるから蕾はまだ固く、木々は不機嫌に目を閉じているように見える。・・坂をくだるとひょうたん形の池があって、縁には太い桜の木がたくさん植わっていた。今は夏だけど、花見の時期は相当キレイだろうなと思った。池の表面は艶やかで、木々の緑が淡く映っていた。・・園庭の桜の木が見えてきた。門の外まで枝を広げる雄々しい桜は、この季節、すでに半分以上葉を散らしてしまっている。こどもたちの花びら集めも、真夏の毛虫騒ぎも、そんなことが本当にあったのか分からなくなるくらいに過ぎてしまった。・・今日はくっきりした晴天だが、こういう日の方が寒い。冬がそろりそろりと身を寄せてきて、あたしたちの空に覆いかぶさろうとしているのが分かる。空気が尖って、桜の枝の焦げ茶色が、妙につよく濃く見える。(「やわらかな棘」朝比奈あすか)
しばらくすると歌声が聞こえてきた。音楽の授業なのだろう。フェンス越しに校舎が見える。私がかって通っていた小学校だ。新学期を迎えた校庭の桜ははらはらと花びらを散らし始め、辺り一面をピンク色に染めている。私の息子、亮太郎もこの春、ランドセルをコトコトと背負い、小学校生活をスタートさせていたはずなのだ。死んだ子の年を数えるものではない、と人は言うけれど、そんなことは当事者ではない人間の戯言に過ぎない。こういう光景を目の当たりにすれば否応なしにあの子の想い出が甦る。息子は二年前、たったひとりで空へと上って逝ってしまった。・・立ち上がり、カーテンを全開にする。窓を開け、重苦しい空気を入れ換えた。香るように四月の風がくるくると回りながら部屋の中に入り込む。目の前には桜の樹があり、はらはらと花びらを散らし始めていた。生きていれば、この桜の樹に見送られて、亮太郎は元気に登校したのだろう。・・開け放した窓から桜の花びらがひらひらと舞い込んできた。掬うように両手に受け止める。花びらは柔らかくあたたかかった。(「ひとごと/桜ひらひら」森浩美)
外は灰色のビル街。窓の下に、場違いのように桜の大木があった。蕾がほころんでいる様子がここからでも分かる。四方に伸びた枝に蕾が密集し、桜木全体に盛り上がるような量感がある。あの日の朝、桜子と一緒に玄関を出たとき、我が家の桜の枝はまだ裸だった。人の身に何が起ころうと、自然の営みが留まることはない。少しずつ季節が移ろっている。(「午後二時の証言者たち」天野節子)
区役所で貰った薄っぺらい紙を抱えて、私は駅に向かって長い坂を下った。夕暮れの風が、やさしく頬をなでていく。道の途中、ビルの狭間にひっそりと一本の桜の木が立っているのが見えた。この木を守るために、その場所を避けて建物が建てられたかのような、不自然な位置にその木は存在した。その時もう一度ふわりと風が吹いて、辺り一面に花びらを散らした。父はもう桜を観れない。けれど私は観ている。ふいに涙が沸き上がってきた。父の不在が哀しいのではない。父がこの状況をどう見ているか、あるいは見ていないのかを知る術がないことに、ただ呆然としているのだと思う。(「音のない花火」砂田麻美)