樹木解説
日本の野生桜の代表。高さは15-25mになる。樹皮は暗褐色。新芽は赤、茶、黄色、緑など変異が多い。成葉は長楕円形、卵状長楕円形または卵形で長さ8-12cm。ふちには細かくて鋭い鋸歯がある。3月下旬ー4月中旬、直径2.5-3.5cmで白色または淡紅白色の花が散房状に2-5個つく。雄しべは35-40個。花弁は5個で円形または広楕円形。萼筒は長鐘形で萼片は全縁。果実はほぼ球形で5-6月に紫黒色に熟す。
10.04.08小石川植物園 |
12.04.09上福岡 |
10.04.08小石川植物園 |
12.04.09上福岡 |
樹名:群桜(ムレザクラ) |
14.03.28小石川植物園 |
14.03.28小石川植物園 |
14.03.28小石川植物園 |
樹名:薄毛山桜(ウスゲザクラ) |
14.04.05筑波実験植物園 |
14.04.05筑波実験植物園 |
14.04.05筑波実験植物園 |
樹名:長勝院旗桜(チョウショウインハタザクラ) |
17.04.10花と緑の振興センター |
17.04.10花と緑の振興センター |
17.04.10花と緑の振興センター |
小説の木々
夏になれば緑がいっぱいで蝉の声が降ってくるような場所なんだろうけれど、今はまだ春にさえ遠慮をしている。谷間のむこうで一本だけ咲く始めたやまざくらはもちろん人間が植えたものではなく、花の季節以外は桜と認識されることはない。(「薄情」絲山秋子)
この年、扇野の桜は見事な花を咲かせ、特に花見に出るわけでもない紗英ですら、遠くに見える山の中腹に霞がかかったような山桜を目にし、風にのって花びらが舞い散るのを見るたび、心がなごんだ。やがて生まれてくるわが子に、この世の美しさを見せてやることができると思うだけで、嬉しさが胸にあふれ、目にふれるものすべてが輝きを放っているようにさえ感じられる。(「はだら雪」葉室麟)
空と海の隔てが霞む、晴れ渡った朝だった。ひとつ、ふたつ、みっつー桐谷主水は頭上に花開く桜を胸の内で幼子のように数えた。見上げる顔に花びらが二、三片舞い散ってきた。城内の潮見櫓のそばには一本の丈高い山桜が植えられている。細い枝に咲いた遠目に白く見える淡々しい色の花が春霞む青空に映えていた。(「陽炎の門」葉室麟)