樹木解説
高さは2-3mになる。若枝は細くて垢状の星状毛がある。葉は対生し、長さ6-13cmの楕円形または長楕円形。両端はしだいにとがり、ふちには細かい鋸歯がある。両面ともほぼ無毛。裏面には黄色をおびた腺点がある。6-7月、葉腋から集散花序をだし淡紫色の花を多数つける。花冠は直径3-4mmの筒状で先は4裂し裂片は平開する。雄しべは4個で花冠から長く突き出る。花柱は雄しべより長い。萼は小形の杯形で先端は浅く4裂する。果実は直径3-4mmの球形で紫色に熟す。
12.09.09森林公園 |
12.09.09森林公園 |
11.06.23神代植物公園 |
11.06.23神代植物公園 |
11.06.23神代植物公園 |
10.06.26森林公園 |
09.09.21上福岡 |
11.10.17庄原市帝釈峡 |
補足
項目 | ムラサキシキブ | コムラサキ |
樹高 | 2-3m | 1-1.5m |
葉 | 長さ6-13cmの楕円形、長楕円形 | 長さ3-7cmの広卵状楕円形 |
鋸歯 | 細かい鋸歯 | 上半部の鋸歯 |
花期 | 6-7月 | 6-7月 |
花の出所 | 葉腋から集散花序 | 葉腋から少し上部から集散花序 |
小説の木々
秋も深まった頃に濃い紫色の実が枝に沿ってずっしりと並ぶ姿を散歩の途中のどこかの家の庭で見てたまらなく欲しくなり、高さ十センチほどの苗木を種苗店の店頭で五百円で買い求めた。大ぶりのすり鉢にふさわしいすりこぎくらいの幹は猫の爪とぎに適しており、飼い猫のトラが元気だったころはもっぱらこの木で爪をといでいた。トラが死んでもう三年に経つ。傷ついた幹の肌には厚い皮がかぶり、そこに残るわずかな凹凸だけが彼の生前の姿を思い起こさせるきっかけになる。けれど、それを知るのは妻とこの身だけだから、二人がいなくなればそこには幹がごつごつして不恰好だけれどしぶといムラサキシキブだけが残る。廃屋の庭いっぱいにムラサキシキブがはびこって、紫一色の晩秋の点景になればいい。(「先生のあさがお」南木佳士)