ハクモクレン(白木蓮)

別名 ハクレン
科属 モクレン科モクレン属
学名 Magnolia denudata/Magnolia heptapeta

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形

10.03.17府中

樹木解説

高さは15mになる。葉は互生し、長さ10-15cmの倒卵形で先端は短く突出する。3-4月、芳香のある白い花が咲く。花弁は6個、萼片は3個。花弁と萼片は区別しにくく、いずれも長さは7-8cm。

09.04.19新宿御苑

09.04.19新宿御苑

10.01.15昭和記念公園

10.03.17府中

09.03.20上野

09.03.20上野

09.03.22立川

12.08.15神代植物公園

補足

 

ハクモクレン

コブシ

タムシバ

開花時期 3月中旬 3月下旬から4月 4月から5月
花弁 直径20cmくらいの白い花弁が6枚、萼片も同様で区別が付かず花弁が9枚あるようにみえる、厚ぼったく丸みを帯びる 9cm程度の白い花弁が6枚、小さな萼片が3枚、花弁基部は淡赤紫を帯びる事がある  10cm位の花を1個ずつつけ,日が当たると平開、白色で花弁は6枚、小さ目の顎片は3枚、合計9弁の様に見える場合もある
花弁の向き 上向き 斜め上もしくは横 斜め上もしくは横

葉は互生し短柄があり、10-18cmくらいの大形の広倒卵形

花の下に小葉が付かない

9-17cmくらい、広楕円形から倒卵形で、表面は緑色で裏はやや白緑色、無毛で全縁でやや波うつ、ハクモクレンに比べ小振り、タムシバに比べて幅が広く、先端に近い場所で最も広い

花の下に小葉が付く

互生、7-14cmくらいの楕円形から卵状被針形、中央部付近で最も幅が広い、やや薄く硬く無毛で裏面は帯白色

花の下に小葉は付かない

小説の木々

私はいつの間にか、花のトンネルの中にいた。味のある枝振りに、真っ白な花が無数に咲いている。それを見た途端、耳には鳥の声が、鼻には香りが甦った。「ははあ・・・。綺麗なものですな」私は唸った。「ちょうどいい時期でした。盛りでしたね」「こいつは桜ではないようですな」しかつめらしい顔でそんなことを言ったものだから、妙子さんは困ったように笑った。「これは木蓮です。白木蓮といます」「へえ」これが木蓮というものですか、とはさすがに恥ずかしくて言えなかった。私は大学四年生にもなろうというのに、木蓮の花すら見てわからぬほどに無教養だったのだ。・・どこまでも続くような花の道をぼんやりと見上げながら、学友にも話したことがない事情を、私は問われるままに話していた。(「満願」米澤穂信) 

ほら、と指さされた背の高い木を見上げる。木の枝には、手のひらほどの大きさの真っ白い花がたくさん咲いていた。どの花も夜空に向かって開いているため、コップのように月明かりを溜めてじんわりと淡く光って見える。花に近づくと、涼しく甘い匂いが鼻をかすめた。もう散り際なのか、木の根元には花びらが溜まって白い絨毯みたいになっていた。「明日はぐっと暖かくなるらしいがら、もう終りだど思ってね。ハクモクレンは咲いでる期間が一年に三日か四日ぐらいしかなくて、すぐに花びらを落どして枯れちゃうんだ。最期を見でいてやろうと思ってさ」そう説明される間にも白い花びらがまた一枚、まるでなにかに耐えるのを止めたように、音もなく地面に落ちた。(「桜の下で待っている」彩瀬まる)

彼は白いモクレンの花を見ながら妻に言ったのだった。「よく考えてみると、一年中で人間の足が一番美しいのは初夏だよ。人間が一番健やかに爽やかに都会を歩くのは初夏だよ。木蓮の花が散る前に病院を出なければならない」(「掌の小説/人間の足音」川端康成)

明日は畑中が郷里の連隊へ旅立つという前日、私ははじめて畑中が下宿する寺町のお寺の離れを訪れた。畑中との別れを、どのように行おうというのか、私の頭の中に、はっきりした形が描かれていたわけではなかった。それでいて、私はわが家の門を出たとたん、思いついて急いでひきかえすと、下着をことごとく清潔なものに変えて出直した。町外れにちかい寺町についた頃、星がきらめきをまし、夜空に満開の木蓮が白っぽく浮かび上がっていた。(「花芯」瀬戸内寂聴)