アジサイ(紫陽花)

別名 
科属 ユキノシタ科アジサイ属
学名 Hydrangea macrophylla form. macrophylla

性状
落葉低木
葉の分類
対生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考
アジサイは元々日本産だが、ヨーロッパで品種改良され逆輸入でセイヨウアジサイが渡来した。セイヨウアジサイは日本のアジサイよりやや大型で様々な品種が作られている。といわれても、区別はつかない。樹木札にセイヨウアジサイと記載のあったもののみ別にした。

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形

12.06.07小石川植物園品種名:ヤエセッカアジサイ

樹木解説

ガクアジサイの両性花がすべて装飾花に変わったもの。高さは1.5mになる。葉は対生し、長さ10-15cmの卵形または広卵形で、先は急にとがり、ふちに鋸歯がある。質は厚く、表面は光沢がある。6-7月、枝先に散房花序をだし、直径3-6cmの装飾化をつける。淡い青紫の花弁のようにみえるものは4-5個の萼片で、花弁はごく小さい。雄しべと雌しべはあるが欠結実しない。

15.05.25花と緑の振興センター「細姫アジサイ」

09.05.23上福岡

12.06.05上福岡

12.06.05上福岡

樹名:黒軸アジサイ
学名:Hydrangea macrophylla f. mandschurica
特徴:古く江戸時代から栽培されてきた品種で若枝が紫黒色になる。花はテマリ型で中性土でピンク、 酸性土で青くなる。

15.06.08花と緑の振興センター

15.06.08花と緑の振興センター

15.06.08花と緑の振興センター

小説の木々

窓の外は霧にとざされていたが、白い霧には淡い紫の色がにじむようになった。その色が電車の動きにつれて後方に流れていく。かれは、色の流れに見惚れた。沿線に咲き乱れるおびただしい紫陽花の色が霧にすけてみえるのだ。芦ノ湖の風光は見なれているので、これといった感慨はなかったが、紫陽花の色に久しぶりに自然の美しさを眼にしたように思った。戦時中、海軍の技術科士官として内地に勤務していたかれは、何度も空襲に身をさらした。その後戦争は終わったが、眼に映るのは、広大な焼跡、闇市場、うつろな表情をしてあてもなく歩く人の群れなどであった。そうしたものにふれつづけてくたかれには、霧の中を流れる紫陽花の色が新鮮なものに見え、ようやく自分自身を見出したような安らぎを感じた。(「光る壁画」吉村昭)

夏休み最後の日、正午過ぎの暑い時間だった。わたしは大輝をあじさい公園に呼び出した。花の盛りはとうに終わって、茶色く干乾びたミイラのような花が残っている。あじさいは美しいが、終わり方が醜い。この花がみずみずしい青さで咲き誇っていた季節はほんの二ヶ月ほど前だった。もうずいぶん昔のことみたいな気がした。(「いちばんめ」加藤元)

庭の片隅に紫陽花が植えられている。色鮮やかな紫陽花を見つめながら、ほりは口を開いた。「扇野の女人は、あの紫陽花のような方ではないでしょうか」「会うてみなければわからぬが、そうかもしれぬな。女人とは奥ゆかしきものよ」安兵衛は、いずれ命を投げ出そうとしている自分を夫として、日々を怠りなく過ごすほりを労わるかのように言った。雨が続いた後の晴れ間で、花弁の色がつやめきを増した紫陽花が風に揺れた。(「はだれ雪」葉室麟)

沈黙が落ちた。そうか、と老人はつぶやくと、縁側に目を向けた。さかりを過ぎつつある紫陽花が、あざやかな青から枯色に変わりかけている。(「侵蝕」櫛木理宇)