樹木解説
高さ1-5mになる。茎は太い円柱形で葉の落ちたあとが全面にある。葉は長さ0.5-1.5mの大形の羽状複葉で茎の先に叢生する。小葉は光沢のある暗緑色で長さ8-20cmの線形。花は6-8月、茎の先に付く。雄花は長さ50-70cmで鱗片状の雄しべが多数あり、裏一面に葯室がつく。雌花は球形で羽状に裂けた多数の心皮からなる。心皮には淡褐色の綿毛が密生し基部に3-6個の胚珠がある。種子は長さ2-4cmのやや扁平な卵形で光沢のある朱赤色。
09.01.08五反田 |
09.01.08五反田 |
10.07.31小石川植物園 |
10.07.31小石川植物園 |
那古寺の大蘇鉄 |
14.04.12館山市 |
14.04.12館山市 |
14.04.12館山市 |
小説の木々
広普山妙国寺は、日珖上人が三好之康から土地の寄進をうけ、実父油屋常言の経済的な支援によって開山したものである。今でも境内には、国指定の天然記念物である大蘇鉄が千年以上といわれる樹齢を保っている。安土城の築城に際して、信長は日本一と称されるこの蘇鉄を城内に移植した。ところが蘇鉄が堺を恋しがり、妙国寺に帰りたいと夜毎に泣く。腹を立てた信長は、刀をつかんではっしと斬りつけた。すると切り口から真っ赤な血がふき出したので、信長は気味悪がって境に返した。妙国寺にはそんな伝説がある。(「等伯」安部龍太郎)
五本組の蘇鉄は尖った葉が生い茂り、幹も見えないほどだった。下半分の葉は完全に枯れ、変色して垂れ下がってる。まるで焼け残ったような、凄まじい様子になっていた。一瞬、胸が絞り上げられたように縮んだ。松葉の匂いがいた。喉が焼け、息ができなくなったように感じる。背中が熱い、燃えている。「鉄樹、鉄蕉ともいいます」ひとつ息をして拳を握りしめる。わざと引きつれを確かめた。(「鉄樹」遠田潤子)