樹木解説
ミネザクラの有毛の一変種。高さは2-6m。葉は長さ3-8cmの倒卵形で両面とも有毛。葉柄にも毛がある。5-7月、葉と同時に直径約2cmの淡紅色または白色の花が咲く。
12.06.12尾瀬 |
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小説の木々
珠生が五年ぶりに実家に戻った日、庭の千島桜がいくつか咲き始めていた。爆撃で失った家を再建する際に、父が泣きながら植えていた樹だ。太平洋戦争が根室の町に残した傷跡も、復興の名の下に薄れつつある。歳月は十五年ぶん木々の年輪を増やしたが、同時に人と人のあいだも細かな溝を刻んでいる。日本でいちばん遅い桜も、あと一週間ほどで満開になる。五月の風はまだ冷たいが、北の桜は葉陰で咲くのでしぶとく花弁を保ち続ける。珠生は実家の窓から見える春の色を見ながら、ぼんやりと相羽重之のことを考えていた。(「霧ウラル」桜木紫乃)