樹木解説
高さは3-9mになる。幹は滑らかで、淡褐色の薄い樹皮がはげ落ちたあとが白い。葉は長さ3-8cmの倒卵状楕円形で全縁。7-9月、枝先の円錐花序に直径3-4cmの紅紫色または白色の花を次々に開く。花弁は6個で丸くしわが多く、基部は急に細くなる。萼は6裂する。雄しべは多数あり、外側の6個が長い。雌しべは1個。さく果は直径約7mmの球形。
08.11.01上福岡 |
09.06.21上福岡 |
15.07.07上福岡 |
09.06.27上福岡 |
09.07.26上福岡 |
16.10.20花と緑の振興センター |
16.10.20花と緑の振興センター |
09.11.09分倍河原 |
矮性サルスベリ |
12.07.14森林公園 |
12.07.14森林公園 |
12.07.14森林公園 |
小説の木々
我が家の玄関脇にはサルスベリの木があり、その背丈はブロック塀より一メートルほど高く伸びている。私が紀代子の両親に初めて挨拶に訪れたとき、一番に出迎えてくれたのはこのサルスベリの木だった。夏になると細かな赤い花をつけ、その蜜を求め、朝からアゲハチョウが飛んでくる。その花の下で丸いビニールプールを出し、子どもたちに水遊びをさせたことを思い出した。もしも本当に別れるようなことになり、この家を手放すことになれば、赤い花を見るのもこの夏が最後かもしれない。そう思うと妙に切ない。(「こちらの事情」森浩美)
前日の送り盆に、思い切って布海苔と小麦粉で髪を洗い、風呂を頂いて、髪結いを呼んだ。それだけで半日以上が過ぎてしまったが、夜具を片づけ、茶殻で拭き清めた座敷につくばって、結い終わった丸髷に気に入りの笄を差し、ふっと息をついて、まだ咲き誇りつづけている庭の百日紅の花に目をやると、早く明日が来ればいい、と思うことができた。・・・その日もよく晴れ渡って、真夏を想わせる陽が降り注ぎ、百日紅の花弁の韓紅が薄藍の空を抉っていた。(「つまをめとらば」青山文平)
桃の入った袋をひじにさげて歩く道は都会と違って、車が少ないのに広い。背の低い街並みに沿って百日紅の並木がピンクの花を咲かせている。午後の早い時刻だが人影はまばらだ。並木のどこかで蝉が鳴き、一本の下で小さな女の子が樹上を見上げていた。昔の私と同じだ。私も百日紅のあのつるつるの幹に蝉がどうやって止まっていられるのかが不思議でならなかった。(「海の見える理髪店」荻原浩)