樹木解説
高さは45m、直径5mくらいになる。樹皮は灰色で厚く、縦に割れ目ができる。葉は幅5-7cmの扇形で中央仁切れ込みがある。雌雄異株。花は4月頃咲き、雄花は尾状で淡黄色、雌花は緑色で長い柄の先に裸の胚珠が2個ある。種子は直径約2.5cmの球形で9月頃熟す。外種皮は黄色で悪臭がある。白くて硬い内種皮がいわゆる銀杏で食用にする。
08.11.01浜松町樹皮には縦にひび割れがある |
09.11.07神代植物公園 |
10.04.27昭和記念公園雄花 |
13.04.06小石川植物園 |
15.04.15小石川植物園雌花 |
10.09.15赤塚植物園 |
16.09.30小石川植物園 |
10.11.15昭和記念公園 |
小説の木々
初霜の降りた寒い日だった。熱を出した娘の看病につきっきりになっていた妻が買い物に行き損ね、冷蔵庫が空っぽだったため、早朝、津村がコンビニに朝食を買いに行くことになった。その帰り道のことだ。家の近くの森林公園を突っ切っている途中、ふ、と冷たい風が吹いたのをきっかけに、ずらりと並んだイチョウの木が、一斉に、ただただこの世を祝福する雨のように、惜しみなく黄金色の葉を降らせ始めた。おそらく前日の急激な冷え込みが落葉の原因なのだろう。朝の日射しを受けた葉がさらさらと輝く風景に、津村はおもわず携帯のシャッターを切った。撮った写真を妻へ送る。そして、形のきれいな葉の数枚を拾い、記念品のつもりで潰さないように慎重にポケットへ入れた。葉はどれもまだみずみずしく、冷たい。(「骨の彩り」綾瀬まる)
時間に急かされない帰り道の所どころに、里子が決まって眼を向ける樹木がある。事務所の前の小路を出外れる角の家の、生垣に沿って立つ三本の銀杏。幹はさして太くはないが、枝振りが豊かで、黄葉の季節には、真夜中にも葉が輝きはしまいかという気がする。(「この国の空」高井有一)
病院の前の、大人二人が両手を拡げてようやく届く大銀杏は、微風に銀色の葉裏をなびかせて、樹全体が巨大な銀紙の柱のように見えた。まさに六月は、北国の街全体が生き返る、優しく鮮やかな季節であった。(「雪舞」渡辺淳一)
横浜の官庁街に並ぶ銀杏の葉は秋風に吹かれ、黄金色に揺れていた。平日だというのに多くの人たちがスケッチブックを広げ、思い思いの色で染めている。(「イノセント・デイズ」早見和真)