樹木解説
高さは1.5-3mになる。樹皮は灰緑色、灰褐色。葉は対生し、長さ4.5-17cmの長楕円形で革質。ふちは全縁で表面は光沢がある。6-7月、枝先の葉腋に強い芳香のある白い花が1個ずつつく。花冠は筒部が細く、先が5-7裂し、平開し直径6-8cmになる。雄しべは6個。果実は長さ約2cmの楕円形で、5-7個の稜があり、先に5-7個の細い萼片が残る。冬、橙黄色に熟す。果実はラーメン、キントンなど黄色の着色料として用いられる。
15.04.22花と緑の振興センター |
09.05.30上福岡 |
14.12.24小石川植物園 |
11.06.13上福岡 |
小説の木々
友子はつまった。そう言われては答えるすべはない。母より理解がある筈だったのが、いつのまにかぎんを古い女の中に閉じこめようとしている。そんなつもりで来たのではなかった。「でも、世間体ということもあるし」友子はみずからを落ちつけるように言った。「残念です」ぎんは庭の梔子の白い花を見ていた。その木は嫁ぐ前からあって、その時からみると大分大きくなっている。(「花埋み」渡辺淳一)
園芸用シャベルで掘り起こし酸素を含ませた土に、近くの商店街で開かれた植木市で買った山梔子の苗木を植えた。果実がサフラン代わりになると聞いて、いつかパエリアでも作ったときに黄色の色づけに使おうと思って水を遣っていると、花が沢山咲くようになっていた。山梔子の花は相当強い匂いを放っているのか、毎年、花が咲きはじめるとどこからかアゲハ蝶が花の蜜を吸うために飛んでくる。蝶には独自の情報交換の手段があるらしく、朝から何羽もおしかけてきた。(「骨風/蠅ダマシ」篠原勝之)
茉莉香はそっと眼を閉じた。記憶の中から白い影が立ち上がり、梔子の香りが襲ってくる。胸が押さえつけられたように重苦しい。茉莉香は眉を寄せ軽く唇を噛んだ。梔子は夜を思い出させる。湿った闇の匂いだ。(「月桃夜」遠田潤子)